はじめてセルフストレッチを本格的に行いたい方に向けて、ストレッチ専門店ストレチックスでお客様にご提案している「転倒防止、姿勢改善」に役立つセルフストレッチのひとつをご紹介します。
(重点部位)
・腸腰筋(ちょうようきん)
腸腰筋は「大腰筋(だいようきん)」と「腸骨筋(ちょうこつきん)」の2つの筋肉を合わせた名称です。大腰筋は背骨の胸椎12番から腰椎4番までが始まりで大腿骨までつながっています。腸骨筋は骨盤の腸骨の表面から始まり、同じく大腿骨までついています。だいたい、みぞおちから脚の方に向かって、股関節の下までです。
上の図のように股関節をまたいでいる筋肉であり、脚を持ち上げる、胴体と脚を近づける機能の持つ筋肉です。階段を上る際、片脚の膝を上に持ち上げますが、腸腰筋が働くことで大腿骨が上がりその先の膝や足先が持ち上がります。残っている脚は軸足となりますが、股関節を伸ばすためには腸腰筋の柔軟性が必要です。 腸腰筋が働くことで脚を引き上げ、前進する、片脚でのバランスを保つといった動作につながります。
(はじめてのセルフストレッチ方法)
右側の腸腰筋をストレッチ。腕、体側を伸ばすとさらに伸ばすことができます。
(はじめてのセルフストレッチ解説)
右側の腸腰筋のストレッチを紹介します。
左足が前、右足が後ろになるように足を前後に開きます。後ろの右足のかかとは浮かせておくようにしましょう。お腹と腿の境目を広げるように右の骨盤を前に押し出します。伸び具合に余裕があれば伸ばす側の腕を持ち上げ、やや斜め上に引き上げます。または胸を前足側に軽くひねるようにしましょう。もちろん両方を加えて頂いても大丈夫です。
左側を伸ばす場合には左足が後ろにして行いましょう。 腸腰筋が働かなくなると、股関節から足を持ち上げる機能が衰えてしまうと考えられます。つまり、つまずきや転倒の原因となってしまいます。
また、姿勢を保つ役割も担っています。背骨の自然なS字カーブを支えて骨盤の位置を正常に保ちます。特に大腰筋は胴体と下半身をつなぐ唯一の筋肉です。この筋肉を働きやすくすることで姿勢改善はもちろん、上半身と下半身の連携をさせ、日常生活やスポーツのパフォーマンスを上げることができます。
腸腰筋の動きがよくなると脚の上がりはもちろん、歩幅を広げるといった効果も期待できます。ストレッチの際も脚が縦長になるような意識が必要です。いつも座り仕事で腿の付け根が狭くなっているなという方には是非お勧めです。
▼大腰筋について、もっと詳しく解説!
大腰筋というとあまり聞きなれないかもしれません。もしかすると腸腰筋という筋肉名のほうが耳にすることが多いように思います。
腸腰筋はこの大腰筋と、骨盤の前側についている腸骨筋という筋肉をまとめている呼び名です。
大腰筋は背骨についています。
背骨は頸椎、胸椎、腰椎といって、首の部分、首の下から背中の上半分、その残りの腰にあたる 部分に分かれて構成されています。
その中で胸椎と呼ばれるところの一番下の部分が筋肉の付着部です。
その背骨から足に向かって筋肉がついており、太ももの骨である大腿骨の上、内側の部分についています。
みぞおちの背中側から骨盤を通り越して太ももまでつくという、深層の筋肉です。
上半身と下半身をつなぐ、唯一の筋肉です。
主な役割2つあり、1つは股関節の屈曲、これは太ももを持ち上げるような動作にあたります。
もう1つは股関節の外旋、太ももを外側に向かって捻る、回旋する動きです。
日常では、階段を上る、高さをまたぐときに太ももを上げる、スポーツではサッカーでのボールを蹴る動きや格闘技の蹴り技で太ももを持ち上げ動作をするというときに働いています。
筋力があるということは太ももをしっかり上げることができるという、関節運動になります。
一方、筋肉がカタくなって縮まってしまったらどうなるかです。
股関節の屈曲という動きが強くなってしまうと、骨盤が体の前側に向かって倒れるという動きにつながります。
これはもも上げのように太ももが骨盤に近づく動きを骨盤側からとらえて、足は上がらずに骨盤が太もも側に近づくという動きです。
これを骨盤の前傾といいます。
骨盤の前傾があるとその上にのっている腰椎が前に反るかたちが強くなります。
このようなかたちは反り腰という状態になり、腰がのけぞっている、背骨を丸める動きがしにくくなることが現れやすいです。
よって、反り腰がある方には、「太ももの前側の筋肉をのばしましょう」というアプローチがとられることが多くなります。
▼大腰筋をどう使うか?
さて、この大腰筋と腸骨筋で構成される腸腰筋、前述のとおり太ももを持ち上げるために鍛え、反り腰を改善するために伸ばしていくといったアプローチは非常に大切です。
この筋肉をどのように使っていけば足腰にとってよいことかを考えてみたいと思います。
ここでとりあげることは上げる方の足ではなく、地面に残った支える側の足についてです。
まず一つ、片足で体を支えるには足の裏にその人の膝や股関節、上半身の重さが崩れずに乗ることが必要です。
もし体が前かがみになって股関節が曲がり、膝が曲がり、お尻が下に落ちているようではバランスが悪く重心が安定しているとはいいにくいものです。
股関節を曲げるための筋肉を鍛えて強くすることで曲がってしまうことを体が学習してしまうと太ももを持ち上げる力は強くても関節を伸ばすための動きがしにくくなっていくこともあります。
大腰筋、腸骨筋の動きの反対にあたるのはお尻の筋肉ですが、そこが働きにくくなるということも起こり、股関節を曲げること、伸ばすことの差が強く出てしますということもあります。
そして、大腰筋、腸骨筋の周りの腹筋群の関連もあると思いますが、左右のうち、片側が縮まることにより体幹が横に傾く、側屈が起こります。
これも片足でバランスをとることに問題を起こすことです。
右足が上がれば重心は左足に、左足が上がるときは右足にかかります。
上半身が右に傾きやすければ左側には重心移動がしにくくなります。
一方、右に重さがあることによりそこには重心がかかり、左足の方が上がりやすいといったことも生じます。(他の筋肉や関節の影響もあるので必ずではありませんが)
左足に重心が乗れないことが理由で右足が上がりにくい、しかし上がらない側の右足を太もももを上げて鍛えようとしていくと、より左に重心移動ができなくなるといったことも見過ごせない点です。
階段のように高く足を上げるというだけではなく、平地でもつまずくといったこともこのようなことが関連していることがあります。
▼アスリートと大腰筋の強さ
アスリートといえば体幹!ということを安易に考えてしまいますが、大切なことは事実。
この大腰筋が運動パフォーマンスにとても関わっていることがあります。
あまり見慣れない画像かもしれませんが、人間のお腹を断面図、輪切りの図です。
※画像:http://totsubo-variee.jp/qa/より
これは高校生と高齢者の断面図ですが、内側の丸くなっている部分が大腰筋です。
年齢差があるので筋肉の大きさの差があるのは当然のことかもしれません。
ただ、スポーツでの運動能力、特にスプリント競技ではこの大腰筋の大きさの差が走るスピードの差に大きく影響していることがデータとして出ています。
すでに引退していますが陸上100mの世界記録保持者、ウサイ・ボルト氏は長い手足で短距離には不利といわれる体格でした。
それでも足と腰を前に出して加速していく動きは大腰筋の力であるといわれます。
また、長距離選手でもストライドが大きく加速している選手はこの筋肉の活動量が関わっていると考えられています。
はじめの方に、「上半身と下半身をつなぐ唯一の筋肉」と書きましたが、これが上下のパワーをつなぎあって働いている効果ではないでしょうか。
※ウサイン・ボルト氏(右)
腹部が出ているのは大腰筋が発達しているからという見解がある
アスリートでなくても日常でしっかりとした足腰で、足どりで歩く、姿勢でいるためには機能を維持したい筋肉です。
深層にあり、腕の筋肉などのように目で見えないため、どのように動いているかはわかりにくい部分ではあります。
みぞおちから太ももまである、背骨と股関節が共同して動くといった意識が大切なのだと思います。
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