このブログでは、ストレチックス本部著書「70歳からのゆる~い筋トレ&ストレッチ」執筆者が、本で書いたことの要点や、書ききれなかったことを、お伝えしていきます。
今回のテーマは「お尻の筋肉の役割」です。
●股関節を動かすことに働く殿筋群
▼厚みと丸みのある大殿筋
われわれ人間は直立二足歩行ができる生物です。
人間に一番近いとされるチンパンジーは四足歩行とまではいかなくても拳をつけたナックル歩行をしています。
ゴリラも見た目でわかる大きな筋肉ですが常時、立位で生活をしていません。
直立二足になったことは人間の進化。
骨格の進化でそうなったのかもしれませんが、立位を保つために必要な部分がお尻の筋肉、大殿筋です。
大殿筋(だいでんきん)
起始:腸骨稜の後方4分の1
仙骨と尾骨の腸骨近くの後面
腰背筋膜
停止:大腿骨大転子外側面
腸脛靭帯
機能:股関節の伸展
股関節の外旋
股関節の内転の補助
立位になるというのは前に傾いている身体を上に起こすことです。
この動きには股関節の動きが必要で、大殿筋の機能である股関節の伸展が該当する動きです。
大殿筋は強力な股関節の伸展のため筋として活動しています。
ただ立っているために働いているわけではありません。
大殿筋の機能である股関節の伸展は足の動きに働く重要な関節動作です。
立位の状態から片足を後ろに引く動きが股関節を伸展させた動きになります。
バレエやフィギアスケートなどで後ろに向かって足を高くあげるような動きも同様です。
これらの競技やダンスなどを行っていれば頻繁に使う動作かもしれませんが、日常ではあまり
使うものではありません。
これは体幹、骨盤に対して足を後ろに向けている運動です。
反対に、足に対して体幹、骨盤を後ろに倒すようにするとこれも股関節の伸展になります。
ラジオ体操などで出てくる体を後ろに反らす運動はこの動作に当たります。
これも意識的に行っていなければ行うことは少ない運動かもしれません。
日常で行う股関節の伸展の一つは、歩くことです。
直立二足歩行の我々は、前に進む際には当然、足を一歩前に出します。
その先に進むためには反対の足を前に向かって踏み出します。
この時はじめに出した前足は後ろ側に変わっています。
この状態が股関節の伸展です。
足が前側に出る、股関節が前方向に使われる動きを伸展と対になる屈曲といいます。
屈曲した足に身体の重さが乗り、重心が前側に移動します。
そして伸展することで次の足とともに身体が前に移動しています。
意識して大殿筋使って歩いていることはないですが、機能として活動しています。
歩くときに働くのであれば走るときも同様です。
スピードが出ることによって歩幅、ストライドが大きくなれば足が前後に動く大きさが広くなるのでより屈曲から伸展の動きが必要です。
★股関節の伸展で前に進む
前に向かって進むことの他には上方向に身体を押し上げるときにも大殿筋が使われます。
例えば椅子に座っているところから立ち上がるときです。
高さがあり浅く座っているときはそこまでではないですが、深く、股関節を曲げている際にはそれを伸ばし身体を上に押し上げる必要があります。
屈曲している股関節が伸展して戻らなければ骨盤も背骨も頭も上に向かわず直立に戻れません。
もし股関節の伸展動作が不足していれば膝を中心に足を伸ばすことになり、膝に負荷をかけやすくなります。
そして身体が起きずに中途半端な体勢になれば中腰の姿勢になり腰への負担もかかります。
大殿筋が働いたスムーズな股関節伸展の動きを保ちましょう。
大殿筋の筋力トレーニング シングルレッグヒップリフト
仰向けになり膝を立てて片足を上にあげておく
軸足でお尻を持ち上げる
大殿筋のストレッチ
▼歩行のバランスをとる中殿筋
中殿筋
中殿筋は大殿筋よりも骨盤の上側の部分に付着する筋肉です。
同じ「殿筋」の部類ですが大殿筋とは役割が異なります。
中殿筋(ちゅうでんきん)
起始:腸骨稜のすぐ下の腸骨外側
停止:大腿骨大転子の後外側
機能:股関節の外転
股関節の内旋(前部)
股関節の外旋(後部)
中殿筋の機能の一つに股関節の外転というものがあります。
これは足を外側に開く、横方向に向かって広げる関節運動です。
例えば、右足を外側に向かうように横方向に開くと右股関節の外転になります。
あまり中殿筋を使うということは日常では意識をしないかもしれませんが、自転車や車から乗り降りするときに高さを跨ぐようにする動きには足を横方向に使うことがあるかと思います。
スポーツ競技では体操などでY字バランスのように足を外側に高く持ち上げる動きは中殿筋の働きがあります。
そこまで大きく足を広げることは日常であまりないのですが、この外転はバランスをとるときに重要な働きをしています。
片足で立ったときにぐらぐらせずに立てるのは外転により股関節が安定する働きによることが一つです。
(もちろんぐらつくこともあり、膝の動きや足裏の安定感も必要ですが股関節の外転に着目します)
片足で立つときにはその軸足に体重が乗り、重心が安定することが必要です。
そのときに股関節の上に骨盤がしっかり乗らなければ上半身の重さはまっすぐに保てません。
その股関節と骨盤のバランスを保つ機能の一つが股関節の外転、中殿筋の働きです。
我々が意識して足を浮かせるのは高さを跨ぐときですが、それ以外では歩くことは片足立ちの連続です。
大殿筋は前後の動きに対して働いています。
中殿筋は左右のブレを制御しています。
右足を前に一歩出した際、次は左足を踏み出します。
左足が地面につくまでの間は右足一本で立っていることになります。
その間、身体が横に傾かないように支えているのが中殿筋の機能です。
股関節の外転がうまく機能しないと右足で支えている間、上半身は左側に傾くようになります。
このような中殿筋の機能低下によって傾いてしまうことを「トレンデレンブルグ徴候」という呼ばれ方があります。
これに当てはまらなくても中殿筋の筋力の弱さや、対になる太ももの内側の筋肉のカタさによって片側に傾きやすくなることがあります。
片足になったときに支持をするために働くのが中殿筋の機能です。
★中殿筋が働きでバランスがとれる
▼中殿筋とともに働く小殿筋
あまり注目されない筋肉かもしれませんが股関節の動きに働いています。
中殿筋と重なり、股関節に近い部分、深層にある筋肉です。
小殿筋(しょうでんきん)
起始:中殿筋の起始のすぐ下の腸骨外側
停止:大腿骨大転子の前面
機能:股関節の外転
股関節の内旋
働きは中殿筋と同じく歩くときや片足立ちになったときに股関節を安定させて支持をします。
片足支持のために働くと考えると、その機会が少ないと中殿筋も小殿筋も衰えやすくなるといえる部分です。
デスクワークなどで座っている時間が長く、歩くことが少なくなれば筋肉が働かない時間が増えてきます。
「お尻を鍛えてヒップアップ」というとトレーニングが出てきますが、日常で動かす機会をつくることも忘れずに意識しておきましょう。
中殿筋・小殿筋のトレーニング レッグアブダクション
横向きになり上の足を持ち上げる
中殿筋のストレッチ
▼回旋に機能する深層外旋六筋
漢字が並んだ筋肉名ですが、お尻の深い層にある、外旋に働く6つの筋肉のことを表したものです。
臀部の外側を覆う大殿筋は厚みがあり、その下の層にこの筋肉があります。
梨状筋・上双子筋・・下双子筋・外閉鎖筋・内閉鎖筋・大腿方形筋の6つをまとめて表しています。
梨状筋(りじょうきん)
上双子筋(じょうそうしきん)
下双子筋(かそうしきん)
外閉鎖筋(がいへいさきん)
内閉鎖筋(ないへいさきん)
大腿方形筋(だいたいほうけいきん)
起始:仙骨前方・坐骨の後方・閉鎖孔
停止:大腿骨大転子の上後方部
外旋という動きは外側方向に向かって回旋させる動きです。
股関節の外旋は太ももの骨である大腿骨が外に回旋する動きです。
大殿筋、中殿筋も外旋の機能がありますが、外旋六筋というようにその動きの専用の筋肉のイメージです。
また大殿筋は筋肉の端と端までの距離があり、外側の大きい筋肉なので大きい回旋です。
一方、深層外旋六筋は骨盤と大腿骨を近い距離で結んでいるため股関節を回旋させると同時に安定させることにも働くとされます。
特にこれらの筋肉は、外旋の反対、股関節の内旋の状態から外旋方向に動きを変えるときに使われます。
野球で身体を回旋してボールを投げる動きやゴルフのスイングなどの捻る運動で、股関節の回旋とともに働きます。
バレエの技法であるプリエは股関節の外旋ですが、身体の中心を意識して行う要素が強いので、大殿筋で外側から大きく動かすよりもより身体の中心側に近い深層の筋肉を使うことが必要とされるようです。
日常では外転と同じく自転車やオートバイから降りるときや足を外側に踏み出す際に股関節が外旋をしています。
深層外旋六筋の筋力トレーニング クラムシェル
横向きになり膝を曲げて重ねる
上側の足を股関節から開く
深層外旋六筋のストレッチ
●まとめ
お尻というとヒップアップ、引き締まったお尻といった外見のことが気になるかもしれませんが股関節を動かすとても重要な筋肉がある部分です。
トレーニングも大切ですが、まずは日常で使う機会が減らないようにすることを心がけてみましょう。
・大殿筋の発達で立位で支えられる。
・お尻の筋肉は股関節の動きに働く機能がある。
・座り時間が長く歩いたりする機会が少なくなると筋力が低下しやすい。
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ストレッチ専門店ストレチックス
https://stretchex.jp/
本部著書&公式ブログ 監修・執筆
本部研修トレーナー 渡辺 久進
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